筋トレで身体を動かすことには、さまざまな効果があります。血流をよくする、脂肪を燃焼させる、筋力をアップさせるなど、健康な体作りを目的として筋トレに励んでいる人も多いのではないでしょうか。
実は筋トレには、心の病である「うつ」を治す働きもあります。なぜ筋トレによってうつが治るのでしょうか。
筋トレでうつが治る仕組みと、うつ症状の改善におすすめのトレーニング、筋トレ以外のうつ解消法をご紹介します。
Contents
筋トレでうつが治る仕組み
うつとは、気分の落ち込みや悲観的な考えから抜け出せない状態が長期間続く状態を意味します。
健康であれば、うつ状態は時間が経つとともに回復するものです。
しかし、気分の落ち込みから回復できないまま悪化すると、以下のような症状が現われます。
- 食欲や性欲などの意欲の低下
- 不眠などの睡眠障害
このような状態を放置しておくことは、決してよいことではありません。
うつ状態が長く続くようであれば、早めに心療内科や精神科を受診する必要があります。
うつの原因として考えられるものはなに?
うつの最大の原因は、ストレスであると言われています。
ストレスを感じると脳の前頭前野や海馬が萎縮して、BDNFと呼ばれる神経細胞栄養因子が低下します。
すると、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌が不活発になってしまうのです。
セロトニンはノルアドレナリンを始めとするほかの神経伝達物質を調整し、人の気分や感情をコントロールします。
また、ノルアドレナリンはやる気や集中力、判断力にかかわる物質です。
これらの神経伝達物質の分泌が不活発になると、意欲が低下し、抑うつ状態から抜け出せなくなってしまいます。
抗うつ剤によるうつ病の投薬治療は、薬によってセロトニン分泌量を増やすことを目的として行われる治療法です。
うつ症状を引き起こすもう1つの原因がある!
実は、セロトニンやノルアドレナリンの不足以外にも、うつを引き起こす要因があります。
それは、テストステロンと呼ばれる男性ホルモンの減少です。
男性ホルモンと言うと、男性にとってのみ働くものと考えられがちですが、女性にとってもなくてはならないものです。
テストステロンは「社会性のホルモン」とも言われ、積極性を高める効果があります。
テストステロンが低下すると、「外に出よう」「人と会おう」などの意欲が薄れ、行動することを「面倒くさい」と感じるようになってしまうのです。
「日経Goody」の記事によると、2015年米国内分泌学会の第97年次会議では以下のような発表がありました。
テストステロンが標準よりも低い20歳~77歳の男性200人のうち56%にうつ症状が見られ、25%は抗うつ薬を使っていたと発表されたそうです。
「テストステロンの減少がうつの原因である」とはっきり言い切れるわけではありませんが、テストステロンの減少による男性更年期障害からうつ病を発症するケースがあることは確かです。
うつを治すために筋トレが有効な理由
うつの治療には、抗うつ薬による薬物療法やカウンセリングによる心理療法のほかに、筋トレを始めとする運動療法が有効であると言われています。
では、なぜ体を動かすことがうつ症状の改善に役立つのでしょうか。主な理由は以下の3つです。
① 血流改善によってBDNFが増加する
筋トレで体を動かすことで、全身の血流が改善します。すると、脳の前頭前野や海馬の体積が増えて、BDNFが増加します。BDNFが増加することで、必然的にセロトニンやノルアドレナリンの分泌量も増えます。
② テストステロンが増加する 筋トレを行うことで、男性ホルモンのテストステロンの分泌量も増えます。テストステロンが増えることで意欲や積極性が高まり、抑うつ症状の解消につながります。
③ 体力が向上することでストレス耐性がつく 筋トレによって体力がつくと、嫌なことがあってもストレスを感じにくくなります。また、体を動かすこと自体がストレス解消となり、抑うつ気分になることが減ります。 |
このように、筋トレにはうつの原因を解消するさまざまな効果があります。
しかし、すでにうつを発症している状態で激しいトレーニングを行うことは逆効果です。
激しすぎる運動はそれ自体がストレスになりかねません。
また、「治るためには毎日トレーニングを続けなきゃ!」と自分を追い込んでしまうことも禁物です。
無理のない範囲で、体を動かすことを楽しみながら筋トレを続けましょう。
うつを治すためにおすすめの筋トレ3つ
それでは、うつを治すためにおすすめのトレーニングを3つ紹介します。
すでに述べたように、抑うつ状態にある中で激しいトレーニングを行うことや、無理に自分を追い込んで筋トレを続けることは逆効果です。
最初は軽いトレーニングから始めて、徐々に負荷を上げることをおすすめします。
この記事で紹介する筋トレは、どれも自宅で簡単に行える初心者向けのトレーニングばかりです。
体力がついてやる気が出てきたら、マシーンを使った筋トレにもチャレンジしてみましょう。
スクワット
スクワットの正しいやり方!効果的に下半身の筋肉を鍛えるフォームの動画です。
セロトニンの分泌量を増やすためには、大きな筋肉が集まる下半身を鍛えるのが有効です。
そこで、代謝を上げ、効率よく下半身が鍛えられるスクワットをおすすめします。
スポンサーリンク
【スクワットの正しいやり方】
① 肩幅と同じくらいか少し広めに両足を開く ② 腕は真っ直ぐ前に伸ばすか、頭の後ろで組む ③ 骨盤を前傾させ、お尻を後ろに突き出す姿勢を作る ④ お尻を後ろに引くイメージで膝を曲げる ⑤ 太ももが床と並行になるまで腰を落とす ⑥ 軽く膝を曲げた状態まで戻る <④~⑥の動作を繰り返す> |
スクワットは常に正しい姿勢を意識して行う必要があります。
ポイントは骨盤の位置をキープすることです。
そり腰の状態でスクワットを行っても効果がないばかりか、腰を痛める怖れがあります。
骨盤を前傾させた状態で膝が外や前に出ないようにするためには、お尻を後ろに突き出すイメージで膝を曲げましょう。
また、背筋は常に真っ直ぐな状態にしておきましょう。
背筋が丸くなっていると腰に負担がかかってケガの原因になります。
スクワットの正しいフォームについては、上に掲載した動画で詳しく解説されているので、参考にして下さい。
腹筋クランチ
腹直筋の緊張を持続させて行う「クランチ」の動画です。
道具を使わず自宅でカンタンにできる筋トレとして、腹筋を鍛えるクランチやニートゥチェストなどもおすすめです。今回は、腹筋クランチの正しいやり方を紹介します。
【腹筋クランチの正しいやり方】
① 足を肩幅に広げた状態で、床やマットの上に仰向けに寝る ② 太ももと膝を90°曲げて、膝から下が床と水平になるように足を上げる ③ お腹をへこませた状態で、腹筋を使ってゆっくり上体を起こす ④ 体を丸めたまま1~2秒キープしてからゆっくり元に戻る <③~④の動作を繰り返す> |
腹筋クランチは、上体を起こすときにしっかり腹筋を使うことを意識するのがポイントです。
反動を利用して勢いよく体を起こすと、トレーニングの成果が上がりません。
体を起こすというよりも、胸を膝に近づけることを意識しながらゆっくり上体を起こしましょう。
足を自力で上げているのがつらいなら、動画のようにイスを使って足をあげて下さい。
筋トレに慣れてきたら、自分の筋力だけで足をあげられるようにしていきましょう。
ダンベルスクワット
ダンベルスクワットの正しいやり方!効果的なフォームやバリエーションを解説しています。
スクワットやクランチなどの軽い筋トレに慣れてきたら、筋肉により強い負荷をかけるダンベルスクワットに挑戦してみましょう。
【ダンベルスクワットの正しいやり方】
① 両腕にダンベルを持って、足を肩幅と同じくらいか少し広いくらいに開いて立つ ② ダンベルを持ったまま、骨盤を前傾させてお尻を後ろに突き出す ③ お尻を後ろに引くイメージで膝を曲げる ④ 太ももが床と並行になるまで腰を落とす ⑤ 軽く膝を曲げた状態まで戻る <③~⑤の動作を繰り返す> |
フォームややり方は、基本のスクワットとほとんど同じです。
重心は常に真ん中に置き、両足の筋肉に均等に負荷がかかるようにしましょう。
うつを治すにはコレ!筋トレ以外のうつ解消法
筋トレ以外にも、うつ症状を解消するために役立つ生活習慣があります。筋トレ以外のうつ病解消法をご紹介します。
1. 休養をしっかりとる
うつ病症状から回復するためには、十分な睡眠をとって英気を養うことも大切です。 心身を休めることでストレスを癒やし、やる気を回復します。 筋トレで体が疲労を感じると、自然に熟睡でき、質の良い睡眠をとることができます。 運動するときと休息するときのメリハリをつけるように心がけましょう。
2. バランスのよい食生活を心がける 栄養バランスのよい食事は、健康の源です。 特に、肉類はセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の原料となるアミノ酸を多く含んでいます。 また、うつ病の人にはビタミンB群が不足しがちであると言われています。 肉類と一緒に、ビタミンB群を多く含む野菜を摂ることも忘れないようにしましょう。 ミネラル類が豊富な玄米や大豆製品なども食事に取り入れると、さらに効果的です。
3. 太陽の光を浴びる 太陽の光は、セロトニンの分泌に深い関わりがあります。 太陽の光が網膜を刺激することでセロトニンの分泌が増えます。 日差しを浴びる時間は30分程度で十分です。 網膜から強い光が入ればいいので、日焼けするほど長時間太陽の下で過ごす必要もありません。 |
まとめ
この記事では筋トレでうつが治る仕組みや、うつを治したい人におすすめの筋トレ方法、筋トレ以外のうつ解消法について紹介しました。
筋トレはうつ症状を解消するのに一定の効果があります。
しかし、筋トレだけでうつが治るわけではありません。運
動療法の効果を過信して病院に行かない、薬を飲まないなどという行為は症状を悪化させる原因になるのでやめましょう。
何事も無理は禁物です。
焦らず治療を続けながら、毎日の生活習慣の中に筋トレを上手に取り入れていきましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
スポンサーリンク
コメントを残す